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フィボナッチ・リトレースメントの引き方:0.382・0.5・0.618の正体

フィボナッチ・リトレースメントは、1つのスイングの幅を決まった比率で分けた価格です。引き方、比率の出どころ、弱点を見ます。

📚 チャート分析をはじめから正しく · 18/52· ⏱ 読了目安 5分 ·情報更新 2026-10-07
📋 基本情報5
計算
上昇スイングの水準 = 高値 −(高値 − 安値)× 比率
比率
23.6・38.2・50・61.8・78.6%、エクステンション127.2・161.8%
50%
50%はフィボナッチ数列から出た比率ではない
弱点
どのスイングを選ぶかで水準がすべて変わる
リアルタイム
高値や安値が進行中の足なら、水準も一緒に動く

リトレースメントの水準とは

価格が一方向に大きく動いたあとは、その動きの一部を戻すことがよくあります。フィボナッチ・リトレースメントは、その戻りがどのあたりで止まるかを見積もるために、直前の動き(スイング)の幅を決まった比率で分けて水平線を引く方法です。線そのものは単純な算数なので、同じ2点を選べば誰が引いても同じ値になります。変わるのはどの高値と安値をスイングとして選ぶかで、この記事で最も長く扱う弱点もその部分です。戻りが起きる理由は、市場参加者の行動で説明されます。大きく上がったあとは利益を確定しようとする売りが出て、遅れて入った人は少し安くなるのを待ち、上がる前に乗り遅れた人は下がってきたら買おうと構えます。こうした注文がどの価格でぶつかるかは決まっていないので、人々は幅を一定の比率で分けた線を基準点にしてきました。フィボナッチ・リトレースメントは、その基準点を誰もが同じやり方で計算できるようにする道具だとみるほうが正確です。線が価格を引き寄せると考えるのは、よくある思い込みです。

引き方:安値から高値へ

上昇スイングなら安値から高値へ引き、各水準は 高値 −(高値 − 安値)× 比率 です。安値100、高値150なら幅は50で、水準は下のとおりです。0%は高値、100%は安値そのもので、100%まで下がればスイング全体を戻したことになります。下降スイングは向きを逆にして高値から安値へ引き、安値 + 幅 × 比率 で計算します。このサイトのフィボナッチ・リトレースメントのツールは、選んだ範囲の中の最高値と最安値を自動でスイングとして取り、どちらが先に出たかで上昇スイングか下降スイングかを見分けます。手で引くときに確かめる順番はこうです。まず足の長さを決め、その足の長さで目立つ大きな動きを1つ選びます。次に始点と終点をヒゲの先にするか実体にするかを決め、同じチャートではそのやり方を変えません。最後に水準の値を書き留め、図の61.8%のように実際の価格がどこまで下がってきたかを比べます。よくある失敗は上下を逆に引いて0%と100%が入れ替わることなので、0%がスイングの終わった側にあるかを必ず見ます。

安値A高値反発0%23.6%38.2%50%61.8%78.6%100%
例: 安値100から高値150まで上がったスイングにリトレースメントの水準を引いた様子。61.8%の水準は 150 − 50 × 0.618 = 119.1 で、押しはその付近(足の安値118.9)で反発しました。
  • 23.6%:150 − 50 × 0.236 = 138.2
  • 38.2%:130.9
  • 50%:125
  • 61.8%:119.1
  • 78.6%:110.7

比率はどこから来たのか

フィボナッチ数列は、1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21, 34, 55…のように前の2つの数を足して次の数を作る数列です。数が大きくなるほど、ある数をすぐ次の数で割った値は0.618に、2つ先の数で割った値は0.382に、3つ先の数で割った値は0.236に近づきます。たとえば 34 ÷ 55 ≈ 0.618、21 ÷ 55 ≈ 0.382、13 ÷ 55 ≈ 0.236 です。78.6%は0.618の平方根(約0.786)で、エクステンションの161.8%は黄金比1.618、127.2%は1.618の平方根です。このサイトのツールはエクステンションを、スイングの始点から幅の127.2・161.8・261.8%だけ進んだ価格として計算しますが、エクステンションを測る基準点はツールによって違うことがあります。これらの比率が自然の中でよく見られるという話は広く知られていますが、それが市場の価格もその比率で止まるべき理由にはなりません。数学的にきれいな出どころがあることと、価格がその位置で反応することは別の問いです。そのため比率の出どころは「なぜこの数字が使われるようになったか」を説明するだけで、水準が役に立つかは別に確かめる必要があります。ほかのツールと値を合わせるときは、エクステンションの基準点と水準の一覧が同じかを先に確かめます。

50%はフィボナッチ比率ではない

水準の一覧にいつも入っている50%は、フィボナッチ数列から出た比率ではありません。数列から出る比率は、数が大きくなるほど0.618・0.382・0.236のような値に収束し、0.5はその中にありません。50%は、動きの半分ほどを戻すことを重視してきた慣習から一緒に使われるようになった値だと、よく説明されます。78.6%のように数列の比率にもう一度計算を加えた値も混ざっていて、水準の一覧そのものがツールや人によって少しずつ違います。名前にフィボナッチと付いているからといって、すべての線が同じ根拠を持っているわけではありません。それでも50%が外れないのは、実際に多くの人がその価格を見ているからです。「半値戻し」という言い方はわかりやすく、ニュースや市況でもよく使われます。結局、水準が注目される理由が数列であれ慣習であれ、多くの人が同じ価格を見ているという事実のほうが大きく働くという見方が多いです。よくある思い込みは61.8%を「黄金比だからより強い水準」とみなすことですが、水準どうしの強弱を決める根拠はこの計算の中にはありません。ツールによっては23.6%や78.6%を外したりほかの値を加えたりするので、使うツールの一覧を先に確かめます。

最大の弱点:どのスイングを選ぶか

すべての水準はスイングの2点から出るので、点を1つ変えるだけで水準がすべて動きます。最初の図のスイングの始点を、最も低い安値A(100)ではなく途中の安値B(116)に取ると、同じ反発が61.8%の水準での反発ではなく、スイングをほぼすべて戻した動きになります。ヒゲの先を使うか実体を使うか、日足で選ぶか4時間足で選ぶかによっても値は変わります。反発が終わってから都合のよいスイングを選べば、どんな反発でも水準に合わせて説明できてしまうという点が、最も気をつけるべきところです。この問題を減らす方法は、スイングを選ぶルールを反発が起きる前に決めておくことです。たとえば「直近の何本かの中の最高値と最安値」のように機械的に決めれば、あとから当てはめるのが難しくなります。このサイトのツールが範囲の中の最高値・最安値を自動で取るのも同じ理由です。ただし範囲をどう決めるかで再び同じ問題が生じるので、範囲を変えながら水準がどれだけ動くかを一緒に見るとよいでしょう。大きなスイングの中の小さなスイングにも水準を引くと線が重なってチャートが線だらけになるので、一度に1つのスイングだけを見るほうが混乱しにくくなります。

安値B高値同じ反発0%23.6%38.2%50%61.8%78.6%100%
例: 上と同じ足で、スイングの始点を途中の安値B(116)に変えると水準がすべて動きます。同じ反発が今度は78.6%と100%の間、スイングをほぼすべて戻した位置になります。

ほかの根拠と重なる価格

フィボナッチの水準が注目される場所は、たいていほかの根拠と重なる価格です。以前の高値・安値、何度も止まった支持・抵抗の価格帯、移動平均線、出来高が厚く積み上がった価格帯が水準の近くにあると、より多くの人がその価格を意識しやすくなります。最初の図でも、61.8%の水準(119.1)は上昇の途中でしばらく一服した価格帯(約116〜121.7)の中にあります。ただし、こうした場所で価格が止まったとき、その理由が比率のせいなのか、重なっていたほかの根拠のせいなのかは見分けられません。サポート・レジスタンス自動検出ツールでスイングが集まった価格帯を一緒に見るのも、こうした重なりを確かめる方法です。重なりが意味を持つのは、異なるやり方でチャートを見る人たちが同じ価格帯に注文を置くことになるからです。以前に一服した価格帯ならそのとき買った人の買値でもあるので、再び下がってきたときに守ろうとする買いが出やすいと考えられます。確かめるときは水準1つの正確な数字より、その周りの価格帯を広く見て、その価格帯で出来高がどう変わるかを一緒に見ます。重なる根拠が1つもない水準は、そのぶん注目度が低いことがあります。

予測力について冷静に

フィボナッチの水準に特別な予測力があるという証拠は弱いものです。まず、水準が細かく並んでいます。23.6%から78.6%までの5本の線がスイング幅の12〜17%ごとに置かれるので、戻りがどこで止まっても近くに水準が1つはあるものです。5つの水準それぞれの上下に幅の3%ずつだけを「近く」とみなしても、0%から100%までの範囲のうち30%がどれかの水準の近くになります。多くの人が同じ線を見ていれば、その価格に注文が集まって実際に止まることは起こりえますが、それは比率の性質というより、人々の習慣が生んだ結果に近いものです。水準で反発した割合は、この記事では測っていません。そのためフィボナッチの水準は「ここで止まる」という予言ではなく、戻りが進むときに今どのくらいまで来たかを同じ物差しで表す目盛りとして使うほうが正直です。「スイングの半分ほどを戻した」「61.8%を過ぎて78.6%のほうへ向かっている」のように状態を言い表すには役に立ちます。水準で止まるかを先に決めつけるより、水準の近くで足の形と出来高がどう変わるかを見守る人が多いです。

暗号資産と株式で違って見える点

暗号資産は24時間取引されるので高値と安値が足に沿ってつながり、スイングの始まりと終わりを比較的はっきり選べます。株式は通常の取引時間が終わったあとにニュースがたまると、翌日の始値が大きく離れて始まる窓(ギャップ)ができます。窓で飛び越えた価格帯には取引がなかったので、その中にかかる水準は基準点の役割を果たしにくくなります。窓がスイングの始まりや終わりにあると、どの足のヒゲを点に取るかもあいまいになります。韓国株には1日の値幅制限があり、制限値幅まで上がった日の高値は需要ではなく制度が決めた価格であることがあります。米国株には1日の値幅制限がありません。値動きの大きさの違いも大きいです。暗号資産は数週間で価格が何倍にもなることがあり、通常の目盛りと対数目盛りで同じ水準がかなり違う位置に見えます。一部のチャートプログラムには対数目盛りを基準に水準を計算する設定があるので、ほかの人の水準と比べるときはどちらの目盛りが基準かを確かめます。サムスン電子・SKハイニックスのような大型株や米国の株価指数は動きが比較的穏やかで、2つの目盛りの差は小さいほうです。

リアルタイムのチャートで見るとき

リアルタイムのチャートでは、スイングの終点がまだ進行中の足であることがあります。このサイトのツールのように範囲の中の最高値・最安値を自動で取るやり方なら、進行中の足が新しい高値をつけるたびに0%の水準が上がり、ほかの水準もすべて一緒に動きます。少し前に61.8%だった価格が、数分後には50%の近くになることもあります。また進行中の足のヒゲが水準に触れて確定前に戻ると、画面で見た「水準へのタッチ」は確定した足ではまったく違う形になります。リアルタイムで見るときは、スイングの2点がすでに確定した足かを先に確かめ、水準の近くでの反応は足が確定してから判断するほうが記録とずれません。

実践の確認手順

水準を引くたびに下の順番に従うと、あとから当てはめることを減らせます。どの段階も判断を整理するためのもので、結果を保証するものではありません。

  • 足の長さと目盛り(通常・対数)を先に決める
  • スイングの2点を選ぶルール(ヒゲの先か実体か、範囲はどこまでか)を前もって決める
  • 2点がどちらも確定した足かを確かめる
  • 0%がスイングの終わった側にあるかを見て、水準の値を書き留める
  • 水準の近くに以前の高値・安値、移動平均線、出来高の厚い価格帯が重なるかを見る
  • 水準での反応は、足の確定と出来高の変化を見てから判断する

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